幸福と不幸(短編)

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「これは彼女の部屋の敷布団とシーツの間に挟まっていたわ。その中には首絞め裸女の動画と画像が入っていた。おそらく、彼女は兄がノートパソコンにつけたまま直すのを忘れていたフラッシュメモリを勝手に抜き取って、別のパソコンで中身を見たんでしょうね。そして兄の性癖を知った。  まぁ、ここからは想像でしか言えないけれど、フラッシュメモリがない事に気づいてリキがカグヤに言及したのか、それとも、カグヤがリキに性癖を知ったことについて話したのか……」  そして、自分の性癖を知られたから、妹を殺した、と。 「なぁ、一つ聞いていいか?」 「なに?」 「それのどこが“普通”じゃないんだ? 秘密を守る為に殺す方がまだ俺にはわかる気がするが」  すると、化山はいつもの澄まし顔を崩し、目をパチクリさせた。 「狂っているじゃない。それくらいの秘密を知られただけで殺したのよ、妹を」 「ああ、まぁ、確かにそうだが……」  それに、と化山が付け足す。 「リキは首を締めながらカグヤの苦しむ顔を見ておそらく興奮したはず、それでも、頑なに妹を犯さなかった。『殺人はするのに近親相姦はしない』なんて異常よ」  ……どこがどう異常なのか、俺にはさっぱりわからない……。  やっぱり、こいつの感性を理解するのは難しそうだ。
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