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「あまり、部外者には喋りたくないのだが」
化山は微笑みを絶やさず、自分のあまり無い胸を張って、ポンと叩いた。
「大丈夫です。彼はとても優秀な学生探偵で守秘義務は絶対守ります。しかも学生相手にはお金を取りません。慈悲の心が溢れる優しい方なんです。きっと三森さんの悩みも解決してくれますよ!どうか安心してお話しください」
俺と話していた時の冷めた声ではなく、明るく弾むような声。ギャップで鳥肌が立った。
尚も三森は渋ったが、結局、化山の強引さに負け、話すことを承諾した。
俺は奥に連れて行かれ、勧められたパイプ椅子に座って三森と向かい合った。俺の隣には化山が直立不動で構えている。
……はは、どうやら逃がしてはくれなさそうだ。
しかし……化山は一体、俺に何をさせるつもりだ?
周りの視線が俺達三人、主に俺に集まる。
三森は俺の顔を直視せず、少し視線をそらし、おもむろに口を開いた。
「えっと、僕の名前は『三森リキ』。このミス研でサークル長を務めているよ。何から話したらいいかなぁ……。
う~ん、僕には一人の妹がいてね。高校一年生で名前を『三森 カグヤ』と言う。いつも優しく、家事をこなしてくれる自慢の妹なんだ。外見も良くて引く手数多で凄い人気なんだよ」
「はぁ」適当に相槌を打つ。
「――でも、一週間前、カグヤは姿を消した、忽然と。家にあった大きなスポーツバッグも一緒に無くなっていた。家出だと思ったんだが、何の書置きもないし、連絡も来ない。携帯にいくらかけても繋がらない。メールを送っても返事が来ない。僕は怖くなって僕の知っているカグヤの友達に片っ端から電話した。もしかしたら、その子達の家にいるんじゃないかと思ってね」
「で、結果は芳しくなかった、と」
「その通り、その結果は更に僕に不安を煽るだけだったよ。誰一人カグヤが家出したことを知らなかったんだ。カグヤの友人たちも知人全員にカグヤを匿っていないか電話で尋ねてくれたりしたけれど……カグヤはどこにもいなかった。
スポーツバッグが消えていたことから、家出なのはまず間違いないと思う。でも……せめてどこで寝泊まりしているのか知らないと安心できない。……年頃の女の子だから、余計にね」
ふうん、要するに、妹が家出をした。探しあてないと不安で夜も眠れないってことか。
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