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冗談を言って自分で笑う。
すると化山が薄く微笑み返した。
「いいえ、低いんじゃなくて、皆無よ。月に帰ったワケでもないわ」
「『三森 カグヤ』は既に死んでいる」
別段、驚きはなかった。あのサークルの中に殺人犯がいると言っていたし、聞かされたのはサークル員の妹失踪話。
しかも、俺達の『不幸』から考えれば至極当然なくらいだ。
「そうじゃないかと思っていたよ……でも、どうして死んでいると知っているんだ?」
「私、見つけたもの。あの子の死体」
「へぇ……三森さんに伝えないのか?」
「あなたが言ったら? 私は言わない」
どこか楽しげな雰囲気を纏わせ、化山が歌うように言う。こいつ、頭のネジが四、五本抜け落ちてるんじゃなかろうか。
「自殺の可能性は?」
「ない」
化山は続けて言った。
「アレは殺人。あなたには犯人当てと三森カグヤの死体を見つけてもらうわ」
「…………やっぱり、そう来たか」
予想通りすぎて嫌になるな。そんなことして俺に何の得がある。時間の浪費以外に他ならない。ここは断固拒否しておくべきだ。
「嫌だね。面倒臭い」
化山は拒否されたというのに動揺しない、それどころか口端を吊り上げ不気味な笑みを浮かべていた。
「今回の殺人犯はかなり狂っているわ」
……嫌な予感がしてきた。
「今日、私のサークル中にあなたが探偵であるという嘘の情報が流れた。おそらく狂っている殺人犯はあなたが自分を探し当てるかもしれないと思うでしょうね。なんたって今は疑心暗鬼の塊だもの。探偵の登場は相当な痛手よ――さてさて、殺人犯は一体全体、どう動くのかしら?」
脅しに近い言葉。ああ、こいつ、本当に性悪だな。――俺が出会った人生史上最低最悪の女だ。
「俺に選択肢はないってことか……」
犯人を捜し出し、警察に突き出すまで俺は犯人に狙われる。
俺の三歩前に出て、黒いスカートをはためかせクルリと反転。
「そうよ、タイムリミットは――あなたが死ぬまで」
目の前のセーラー服美少女が大鎌を持った死神に見えた。
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