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投げた5円玉の効力が消えないうちにと、早口で唱えて改めて顔を上げると、そこはただの古ぼけたお稲荷さんだった
そう言えば、何でも願いを叶えてくれるって言う割には参拝客の姿も見ない
こりゃ、いっぱい食わされたか。眉間にシワを寄せて、舌打ちしながらお稲荷さんの鳥居をくぐる
チラリと振り返ると、神社の脇のキツネが馬鹿にしたように笑った
普通だったら置物のキツネが笑う訳ないから、怖がらなきゃいけない所なんだけど、自分の願い事で頭がいっぱいだったから
笑った顔を見たら、ムカついた
こんな古ぼけたお稲荷さんに願いを叶えて貰うほど、私は安くはないんだよ!
眉間のシワはますます深くなるし、このままここにいたら、このシワは形状記憶されて取れなくなってしまう
ヤバいヤバい。眉間にシワを持つ女子なんて、世の中に必要とされない
キツネに向かって舌を出して、私はそのまま駅に向かった
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