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こいつは父さんなんかじゃない-- と。
するとさっきまでピクリとも動かなかったのに、水を得た魚のように、信じられない速さで父さんに似た「そいつ」は俺に向かって、襲いかかってきた。
そこにはただ目の前のゴミを消しさるような、酷く冷たい、とても人間のモノとは思えない目があった。
無機質なその表情で「そいつ」は微塵の躊躇いもなく、俺に目掛けて、手刃を振りかざしてきた。
一閃した手刃が落ちてくる。
俺は間一髪でそれを避け、近くにあった机の下に転がるようにして入った。
「そいつ」が放った強烈な手刃は床にのめり込んだ。
その威力は人間の力ではなかった。
バキバキと音をたて、床から抜けた腕をだらんとたらして、「そいつ」は俺の方に体の向きを変え、すぐに襲いかかってきた。
俺は恐怖のあまり、否、中身が違っても自分の父さんが自分を殺そうとしているのが信じられなくて体が動かなかった。
俺は死んじゃうんだと本気で思った。
その時だった--
「キラッ」
と青い光りが……この化け物と同じような色が見えた。
「自然人-Nature Human……今、生まれた場所に戻してやるよ!」
そこには左腕が青く光り輝いた一人の青年が立っていた。
俺はこの時、この「お兄ちゃん」と長い間連れ添う仲になるだなんて思ってもいなかった--
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