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閃光のように颯爽と登場した左腕が青く光る一人の青年はこう言った。
「自然人-Nature Human…今、生まれた場所に戻してやるよ!」
当時の俺には自然人なんてのはさっぱりわからなかったし、大体、何故ここにこの「お兄ちゃん」がいるのかもすぐには理解出来なかった。
「お兄ちゃん」は俺を助けようとしたらしかった。
すると父さんに似た「そいつ」はその「お兄ちゃん」の方を振り返り、
唸り声上げ、構えに入った。
刹那--
「そいつ」は「お兄ちゃん」に飛び掛かった。
何故あそこまでの驚異的な身体能力を持っているのか今でもよくわからない。
が、その計り知れない能力が人間のそれとは違うということを証明していた。
「お兄ちゃん」はいとも簡単に「そいつ」の攻撃をかわした。
と、思った瞬間には俺の目の前に立ち、そしてこう言った。
「お前の父さんはもう、この世にはいない」
……悲しかった。もう何となくは分かっていた。父さんが死んでしまっているということは。
けれども認めたくはなかった。
俺は歯を食いしばりながら涙を流した。
すると「お兄ちゃん」が
「……お前の父さんの体だけは取ってきてやる。生き返りはしないが。もう泣くな。男だろ?」
幼かった俺は返事をしなかった。
そして「お兄ちゃん」は何も言わずに「そいつ」に向かって、飛んだ。
青く光った左腕を大きく振りかざしながら--
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