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「父親は死んでいる」
この男が「少年」の父親であることは予想できた。
このような辺鄙な地に今や人間が住むことはあまり考えられなく、住むとしても、家族くらいしか有り得なかったからだ。
これは必ずしもあの「少年」に伝えなくてはいけないことだった。
自然人に体を「完全」に乗っとられてしまった人間は乗っとられる前に息があっても、必ず死んでしまう。
体が耐えることができないのだ。
恐らくあの「少年」は何故自分の父親がこうなってしまったのか、まだ分かってはいないだろう。
だからまず、事実を伝えなくてはならなかった。
あの「少年」は聞いたら泣き喚くかも知れない。
しかし、いずれにせよ、俺が自然人を倒した後、父親の死を知ることになる。
遅かれ早かれ 知ることになるのだ。
俺は辛かった。
人の「幸せ」を求め、この「活動」をしているのであって、人を悲しませるためではないからだ。
俺は家の中に入り、まず自然人に向かってこう言った。
「自然人―Nature Human―……今、生まれた場所に戻してやるよ!」
あの時すぐに「少年」に対して父親の死を伝えなかったのは、自分の中に死を伝えることを躊躇う思いがあったからなのかも知れない。
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