全ての始まり

9/14
前へ
/71ページ
次へ
「少年」の目には涙が浮かんでいた。 声は上げずに「悔しい」と言った表情で静かに泣いていた。 今思えば自分の父親がもう死んでしまっていて、今、自分の目の前にいる人物は違うモノという事にこの「少年」は気付いていたのかも知れない。 「お前の父さんの体だけは取ってきてやる。生き返りはしないが。もう泣くな。……男だろ?」 俺はあの時、こう言うしかなかった。 なるべく悲しませないように、精一杯の言葉だった。 「少年」は返事をしなかったが俺の方を、力強い瞳で見つめていた。 そして俺は「自然化」した左腕を大きく振りかざしながら、「少年」の父親を乗っとった自然人に向かって飛んだ――
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加