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「少年」の目には涙が浮かんでいた。
声は上げずに「悔しい」と言った表情で静かに泣いていた。
今思えば自分の父親がもう死んでしまっていて、今、自分の目の前にいる人物は違うモノという事にこの「少年」は気付いていたのかも知れない。
「お前の父さんの体だけは取ってきてやる。生き返りはしないが。もう泣くな。……男だろ?」
俺はあの時、こう言うしかなかった。
なるべく悲しませないように、精一杯の言葉だった。
「少年」は返事をしなかったが俺の方を、力強い瞳で見つめていた。
そして俺は「自然化」した左腕を大きく振りかざしながら、「少年」の父親を乗っとった自然人に向かって飛んだ――
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