Ⅰ中山

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裂けた耳は痛々しい印象はなく、むしろチャームポイントと言ってもいい。猫と一緒になっておにぎりを頬張りながら、そう思った。 黒猫はつくねをぺろりと食べると、礼をする仕草も見せず、さっさと公園を出て、雑踏に消えていった。 腕時計に目をやると、12時30分をさしていた。そろそろ行かなくてはならない。人間は猫の自由な生活とは大違いだな、と思う。 ビニール袋を近くのゴミ箱に入れ、僕はベンチを立った。 さて公園を出ようかという時、ふと公園掲示板に貼られたチラシが目に付く。 『行方不明のペットを探しています』 その大きな見出しの下にプリントされたペットは、どこかで見たようなような猫だった。
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