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骨_2
小田隆弘は、幼少時からからだが弱かった。
彼がはじめて骨折したときのことだ。
彼は幼稚園で右の鎖骨を折った。
隆弘本人や幼稚園関係者の弁があいまいで、折れた当時の状況がつかめなかったため、彼の母親は疑心暗鬼となりその原因をかなり突っ込んで追求した。
しかし、彼の骨が折れた原因は‥なにもなかった。
何かの拍子にということもなく、ただ、折れたのだ。
その原因をあえてあげつらうなら、小田隆弘の両親が、血縁で婚姻関係を結んでいるということがあるのかもしれない。
医者は、隆弘のことを、骨が折れやすい体質‥と形容したようだ。
隆弘はいぜん、鼠蹊部ヘルニア(いわゆるだっちょ)を経験していた。
そのことを付き添っていた彼の母がもらすと、医者はさもありなんといった体で‥隆弘のからだが粗雑にできている可能性を、遠回しに、えんえんと述べたてた。
隆弘はこのとき、自分ができそこないのニンゲンであることを理解した。
それは器質的、物理的にそうなのであって、逃れようのないものであるのがハッキリした。
[小田隆弘]は、ニンゲンという造形物としてみたとき、かなり完成度が低い‥隆弘はみずから、自分をこう断じたのである。
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