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小田隆弘のからだには、幼少時からさまざまな異常がみられた。
たとえば、それは頭髪。
ある日には、黒人の子供もかくやと思わせるばかりにチリチリに色あせ、ほそい毛足が鳥の巣のように絡みあう、爆発したアフロのような頭をしていた。
しかしまたある日には、つややかに黒光りする、毛根の太いボリュームのある巻毛の、まるで少女マンガの登場人物のような‥そう、女の子のような髪型をしていた。
親や周囲の人間は、だれも彼の頭髪をいじるようなことはしていない。
それゆえ、そのことはたいへん不審な出来事だった。
人為的なものでなければその変異のバリエーションは、隆弘の生得の体質によるもの、ということになるのだが‥そんなことは、誰もおもい及びもしないことだった。
このことがあったのは、彼が幼稚園児の頃だが‥そのことは、隆弘にとって、あまりおもいおこしたくない記憶に類する。
いま現在の彼の髪は‥若白髪がいくらかまじる以外に、とくにおかしなところはない。
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