骨_3

1/1
29人が本棚に入れています
本棚に追加
/172ページ

骨_3

隆弘の母親は、医者のその失礼ともとれる言辞に、べつだん不興をしめすようなことはなかった。 母親は家に帰ってから、父親になにも伝えることはしなかった。 しかし父親のそぶりは、事態をすでに飲み込んでいるようでもあり‥これはいささか奇妙であった。 隆弘本人は幼稚園児であったこともあり、骨折の苦痛いがいに訴えるべきことはなかった。 隆弘の父親には、どこかまっとうな世の中になじめないようなところがあった。 家庭をもってから‥それでも職を転々とし、引っ越してばかりいた。 母親は黙ってそれにしたがっていた。 両親は新興宗教に入っていた。 その新興宗教はキリスト教系で、大きな市や街などにはかならず拠点があった。 その信仰心において、両親がどれほど深く宗教に傾倒しているのかということは‥隆弘には、よくわからないところがあった。 両親はとくだん、隆弘に信仰を求めるようなことをしなかった。 隆弘はその宗教から自由だった。少なくとも、彼は自分でそうおもっていた。 そして、ある年。 小田隆弘たち家族はN県に転居する。 >>
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!