骨_5

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骨_5

その日、隆弘はホルモンを抑制するという薬を処方してもらっただけですませた。 それにしても‥母親の態度にはおかしなものがあった。 隆弘のからだの異常には過敏なまでに気を回すようでいながら、その結果については、あまり注意を払っている様子がない。 隆弘のからだに度重なる異常があらわれる‥そして、だいたいそれは隆弘自身の先天的な形質に由来する異常である‥という結果が出る。 そのたびに母親は静かな満足に逢着するようで、‥そのあとはなんの関心も払わなくなるのだ。 ‥隆弘の症状は多少改善され、胸の腫れはめだたないまでに落ちついた。 しかし、その後のケアについてはなんの関心もはらわれていない。 薬がきれても母親は知らぬ顔で‥隆弘の治療はそこで中断した。 彼のなかで、女性ホルモン過多であったり男性ホルモン過多であったりと不安定なホルモンバランスの時期は続いたが、それに対する継続的な治療などというものは、ついぞおこなわれることがなかった。 >>
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