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今までフツーに生きてきて、これからもフツーに行きていく。
沢井克夫(42歳)は特別な人間ではない。
平凡な、しがないサラリーマン。
妻の宏代とは一緒になって、14、5年になる。
仲が悪い訳ではないが、あまり会話はない。
ただもう、お互い興味がないだけだ。
ついでに、小学4年の娘(未佳)は父の克夫に興味がないらしい。
いつ頃からそうなったのかは覚えていない。
未佳が幼稚園時分には
「パパ大好き」
と言う言葉を連呼していた記憶はある。
今では娘の名を呼んでも返事すらしない。
誘っても父親だけとは出かけない。
だが母親とは、よく出かけているようだ。
父役の悲しい性。
つらい現実な訳である。
そんな彼の職種は営業である。
NC機やMC(マシニングセンター)等の機械の営業を担当をしていたが、この不況で注文も、ガタッと減っていった。
会社が潰れるということは無いようだが、暇にはなっていた。
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