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それから2週間後。
沢井は妻に
「今日は残業で遅くなる。飯も連れと食ってから帰る」
と言い、定時で上がり、千央と公園近くで待ち合わせをし、食事しに行った。
後ろめたい気持ちも当然あったが、食事だけだと、自分を保護した。
楽しい時は、あっという間に過ぎる。
余り引き止めても彼女に悪いと思った。
車で家まで送ると言ったが、千央は
「ここでいいです」
と、多分、家の近所らしい所で、車を降りようとした、その彼女に沢井は
「あのさ」
と言いにくそうに言葉をかけた。
「はい、なんですか」
千央は1度開けたドアを閉め、また助手席に深く座った。
「えーっとね、こんなこと言うと、いい加減な奴と思われて、嫌われるかもしれないけど、覚悟して言うよ。
俺は千央のことが好きだ。
俺には妻も子供も居るが、そんな俺でよければ付き合ってほしい」
ハンドルを握りしめ、フロントガラスを見つめながら、沢井は言い切った。
千央の返事に、期待はしていなかった。
ダメならダメで、しょうがない。
自分は家庭持ちの上に、40過ぎのオッサンなのだから。
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