この世と《あの世》

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ジリリリリリリリリッ 「うーん。うるさいなぁ。」 目覚まし時計を必死に止めようと伸びる手。でもなかなか目覚まし時計に届かない。 「あぁ、うるさい!!」 慎夜は起き上がり、目覚まし時計を止めた。 ひどい寝癖を直しながら窓を開けた。 うん。実に見事な曇天だった。きっと、いい事が起きるに違いない。 俺がクソヤロー(閻魔大王)に地獄に落とされて3年がたった。てっきり地獄といえばメッチャ熱い鍋に入れられたり、針山を登ったりなどの事を連想していたが、まったく普通の世界だった。家もあるし、学校や会社へ行く事もできる。まあ、違う所もある。この世界には鬼もいるし閻魔大王もいる。でも鬼はそれほど人間と変わらない。頭に角があるくらいだ。閻魔大王に至っては人間と変わりがない。今は平然に話せるけど最初の頃はパニクってなんにも理解できなかった。3年も経ったらもう慣れてしまう。死んだ年から成長しないのも違う所に入るだろう。 地獄に落とされる奴はやっぱり生前に過ちを犯してしまった人だ。皆、笑顔で自分がなんでここに来たのかの理由の話をよくするが俺はまったくその記憶が無い。多少の記憶はあるが過ちを犯した記憶なんて覚えてない。なぜ地獄に落とされたのかも分からない。決めたのは閻魔大王だ。 地獄に落とされた奴はこの世界で100年暮らす事になる。最初の3年は学校に通う義務がある。いわゆる《義務教育》ってヤツだ。ただ3年過ぎたら仕事をしてもいいから小学生が会社の社長をしていてもおかしくないのだ。100年過ぎたら生まれ変わって《この世》に戻る事が出来る。 俺は今年で義務教育が終わる。
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