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ふと、先程まで着けていた腕時計を見た。それは、机にだらしなく項垂れるような姿で置いてあった。どうやらソファーに座って直ぐに外したらしい。 銀色という色が地味な演出を醸し出す。その中で一番小さな針が一番小さいながらも懸命に動き周り、まるで僕を見てくれと言わばかりに自己主張をしていた。 ―9時1分12秒 あれ?そーいえば何が気になって時計を見たのだろうか。単に時刻が知りたかったからだろうか。それとも何もすることがなかったからだろうか。 特に意味もない自分の行動に呆れ始めた頃、頭の片隅から放り出したいと願っていた事を思い出す。全く海馬っていうのは随分早い仕事をするもんだ。 すーっと、何かが頬をかすめた。その感触を覚えたのと同時に俺の頭が右方に引き寄せられていく。目が朦朧とし、自分が意識を失っていく過程にあるのだということに気付く。しかしそれももう遅い。既に目の前は真っ暗になっていた。 ―ちくちくちくちく 最後にそれを見ていたらきっと俺はこう思っただろう。一番小さいのに目立ち過ぎだっての、と。
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