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「「ごちそう様でした」」
う、うまい…
少なくとも俺が食ってきたパスタの中で随一の美味しさであったのは間違いない
このソースのまろやかさは塩化カリウムでは表現できないはずだしな
席を立った愛奈は食器をシンクへ運んで行ったので俺も運ぶ
「洗い物ぐらいは手伝うぜ」
「んー、ありがとう。とりあえず今は溜まってるやつを拭いといてくれない?」
乾燥用の食器棚には洗った調理器具が並んでいる
俺はキッチン上の棚にあった布巾を取り出し、端から拭いていく
その間は愛奈と喋った
この部屋の事、オッサンこと局長の事、料理の事、自分の昔の趣味の事―――
話せば話すほど愛奈はちょっとしたミスを犯したこと以外はいたって普通の女の子だ
短い期間ではあるが、俺が見た愛奈はいつも笑顔でそれ以外の表情を見たことはない
ただ…なんだろう―――
感覚的な話になってくるけど、その表情から垣間見えるものは何もない
何も考えずに反射で出る笑顔な気がして仕方ない
愛奈からは俺と同じ何かを感じる
そしてもう一つ
俺はこんな感じの子が昔、近くにいた気がするんだ
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