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やっと慣れてきたコンクリートを嫌になる季節がやって来た
看守さんの話によると外では雪が積もり始めたらしく、このコンクリートに囲まれた牢獄は静寂と冷たい空気に包まれている
そのせいだろう。俺は数時間こうやって背中を壁につけてるけど、一向に温まってくれない
むしろ、俺から体温を奪っていく
網走刑務所。
唐突だけど俺はその刑務所になぜか捕らえられている
何かをしたわけじゃない、気が付いたらここにいた
まぁ、なんか悪いことをしたんだろう
罪を犯した覚えはないけどそう割り切っている
それに今更ここでいくらそれを主張しても、出してもらえるわけじゃないんだしね…
ガシャン、と廊下の両端にある扉の片方が開く音が聞こえた
そして足音が向かってくるのが聞こえる
足音は一人、誰かが面会かな?
反響して聞こえてくる足音はだんだんと大きくなって俺の牢の前で音を止めた
「立て、10067番」
「…ハイ」
俺に面会…かな?
体を起こす
コンクリのせいで体が痛いや…
手錠を俺に掛け、右端にある牢の扉が久しぶりに開いた
そして200mほどある廊下の端の扉まで看守さんに連れられて歩く
アタタタタ…体を動かしてなかったせいで、いろいろな関節が…
廊下を抜け、階段を下り、また廊下を端から端まで歩いたころには体がやっと動くことに慣れてきたんだけど「ここで止まれ」と指示された
場所は門番のいる比較的大きめの扉の前
看守さんが前に出てき、懐から何やら紙を取り出してそれを門番に見せていた
少しの間話していた門番が、扉の隅にあるパネルにタッチした
しばらくすると扉が開く
隙間から光が差し込み、それがどんどんと広がっていく
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