第一部 ヘンな顧問との出会い

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結局、その日は筋トレ中心の室内メニューで一日の練習を終えた。 悠太が指示したメニューを二年生も含めて十五人は黙々とこなした。 『おい、今日もあの顧問には何にも言われなかったのかよ』 練習後、サッカーシューズの手入れを終えた晃行が声をかけてきた。 『あぁ』 悠太はそう答えるしかなかった。 現実を突き付けられた感が否めない。 二条はここ十年程でめきめきと力をつけてきた。 悠太たちの高校がある県では私立の伊久江学院がずっと全国大会の常連として知られ、Jリーガーだってこれまでに何人も輩出している。 だが、公立である二条は地道に力を付け、七年前に全国大会に初出場を果たし、それ以来これまでに全国大会四回出場、インターハイ準優勝を果たすなど輝かしい成績を残してきた。 同じ公立なのに、彼らはすごいサッカーをする。 練習試合をしても後半のスタミナが桁違いだし、高さを活かしたセットプレーやここぞという時のPKもダントツに上手い。 二条はサッカー部全員が憧れる存在だったし、悠太もいつか二条のようにと思いながらこれまでサッカー部に籍を置いてきた。 また、キャプテンを任されてからは、チーム全体を高める責任を感じてもいた。 二条のサッカーは無理。 持田の一言は痛烈だった。 確かにそうなのだ。 二条には専属のトレーナーがいるし、全国遠征だって年に何回もある。トレーニングルームだって完備されているというし、そんな環境の差を考えても持田の言うことはあまりにも的を射ていた。
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