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週明けの月曜日は始業式だった。
三年生のスタートの日とあって、進路の希望調査があった。
悠太はこれまで真剣に進路について考えたことはあまりなかった。
勉強はできないわけじゃない。
むしろ得意な方かもしれない。
赤点は取ったことがないし、毎回のテストもいつも通り準備をすれば慌てることはなかった。
ただし、英語を除いては。
とりあえず、理系の国公立大学を第一志望に書いておいた。
チームの他のメンバーは進路をどうするんだろう。
これまであまり考えたこともなかった。
そもそもそんな話もあまりしないし。
そう思うと明確な目標もなく、三年生になってしまった自分に少し焦燥感が湧いた。
でも、今は勉強よりサッカーが気になる。
やれる時に、やっておかないと。
そう自分に言い聞かせた。
学校が始まると高校は一気に賑やかになる。
悠太は職員室へ向かった。
『君もなかなか粘るね』
持田は苦笑しながら言った。
『でも、強いチームを目指したいんです』
悠太はいたって真剣だった。
持田はマグカップに淹れたコーヒー一口飲むと視線を動かさずに言った。
『僕はね、サッカーは好きだよ。強いチームを作りたいとも思う』
『じゃ、じゃあ…!』
『でも二条のようなサッカーを目指しても所詮二番手だしそう簡単に一朝一夕で越えられるはずがない。そもそも君たちにはできないんだ』
悠太はその理由を聞きたかった。
でも、どうしてと聞けばまた現実を知ることになりそうで、言葉にはならなかった。
持田は構わず続ける。
『それに』
視線が宙を泳ぐ。
『二条のようなサッカーは、僕は嫌いだ』
『は、はぁ』
『目指すなら、本当にチームが強いサッカーをしたい。それを理解してくれるならば、全力で指導する。どうするかは、君次第だ』
『お願いします』
悠太は即答したことに自分でも驚いた。
持田が何を目指したいのかはなんだかよくわからない。
でもこれだけは確かだ。
強いチームを目指して指導をしてくれる。
そうであれば何でもいい。
今のチームに必要なのは指導者なのだから。
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