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その日は練習が終わると皆そそくさと部室を去っていった。
特に恵はシューズを片付けると、他のメンバーに声をかけることもなく、部室を後にした。
その背中は怒りを感じさせた。
『なあ』
晃行は部室に二人だけになるのを待っていたように声をかけてきた。
悠太は何も答えられない。
どういう言葉を返したらいいのか、わからなかった。
少しの沈黙の後、晃行は続ける。
『まぁ、あれだ。今日は様子見じゃないか。明日からは何か言ってくるだろ』
そう言って微笑んだ。
悠太も微笑み返した。
『そしたらきっと、恵も機嫌直るさ』
両膝をパンと一叩きし、じゃあお先と一言かけて晃行は出ていった。
晃行に気を遣わせてしまう自分がもどかしかった。
でもまだ自分を支えてくれる存在がいることに少しばかりの安堵を覚えた。
晃行の言う通りであってほしい。
今はそう願うしかなかった。
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