第一部 ヘンな顧問との出会い

4/14

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
職員室は中庭を抜けた本館の一階にある。 中庭の桜はピンクの花をつけ、春らしい雰囲気を醸し出している。 悠太は新しい顧問に少なからず期待していた。 前の顧問は熱心ではあったけれど、進学校としての学校の方針を譲らなかった。 テスト前に練習なんてご法度。 模試の日の前後は休み。 毎日の練習も宿題に影響が出ないように午後六時にはきっちりと終わる。 居残りは許されない。 毎日の基本メニューは筋トレや地道な練習が中心だった。 まだメニューを組んでくれるだけキャプテンとしては悠太は気が楽ではあったけれど。 だけどチームは一向に強くならなかった。 県大会は六年連続で一回戦負け。 新人戦も悠太たちは二回戦が最高記録だった。 なぜ勝てないのか。 年二回ある合宿の夜のミーティングではいつも議題に上がる話題だった。 一生懸命やっている。 自分たちのベストを尽くし、やってきたつもりなのに。 練習メニューを確実にこなしてきた。 そんな声が次々に上がる。 そんな中で顧問は押し黙ってしまう。 悠太はそんな悪くなりかけた雰囲気をなんとか和ませる役を毎回担わされていたのだった。 もっと効果的で効率的な練習メニューが必要なんだ。 答えは悠太の中に出ていた。 顧問がもっと考えてくれれば。 そんな思いを抱いていた最中、前の顧問の転勤が決まった。 そして新しい顧問が着任するという話が舞い込んできた。 しかもその新しい顧問は県内でも有数のサッカー強豪校である二条高校でサッカー部の顧問をしていたという。 二条といえばここ十年で七回も全国大会に駒を進め、ベスト十六にも入ったことのある高校だ。 そんな高校で顧問をしていた先生なら美里のサッカー部を変えてくれる。 そんな気持ちの高ぶりを押さえきれなかった。 悠太は力強く職員室の扉を開けた。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加