第一部 ヘンな顧問との出会い

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職員室はまだ春休みということもあってがらんとしていた。 化学の先生をつかまえて新顧問を呼んでもらう。 程なくしてその新しい顧問が現れた。 紺色のスーツにグレーのネクタイ、銀色の時計。 センター分けの髪型が特徴的……というかそれ以外に特徴がないと言っても過言ではないくらいのどこにでもいそうな普通の先生といった印象だった。 『あ、あの、サッカー部キャプテンの矢島です。先生が今日から顧問を引き受けて下さると聞いて……』 『あぁ、そうね』 悠太が言い終わらないうちに新顧問は気のない返事をよこした。 どう聞いてもけだるそうな返事だった。 悠太が返す言葉を選んでいると 『じゃあグラウンドに行くよ。先に行ってて』 そう言い残して新顧問は職員室の奥へ消えて行った。 しばらく閉まった職員室のドアの前に悠太は立っていた。 新顧問……大丈夫なのか? 期待が不安へと変わる。 でも、着任したばかりで慣れていないだけかもしれない。 すぐに姿を消したのも着替えるために更衣室に向かっただけだ、きっと。 ここから新たな一歩を踏み出せる。 悠太はそう自分に言い聞かせながら、中庭を運動場に向けて走って行った。
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