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「雪ふれー。」
その言葉は雪より薄い白い水蒸気になった。
「なにやってんの、梓。」
すぐに消えた水蒸気にばいばいをしていたらそう声をかけられた。
「あ、要。」
「あ、じゃないよ。」
振り返れば声の主はさっむい、と言いつつマフラーを巻く要だった。
「で、なにしてたの?」
「念じてた。」
正直に答えれば、は?と怪しまれた。
嘘ついてないのに。
「雪降りますように、って。」
「…相変わらず梓は不思議っ子だ。」
説明を追加したら更に怪しまれた。酷い。
「雪、降って欲しいじゃん。」
「そう?俺は寒いから別にいいんだけど。」
「(寒がりめ、何歳だよ。)」
と心の中で毒づけば今馬鹿にしたよね?と睨まれた。
別に馬鹿にしてないんですけど、と言い返す勇気もないあたしはただ苦く笑っておく。
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