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モニターの中でリリーは落ち着いた様子で座っている。正座で両足を外へ崩したような形だ。
丈が異様に短くて青い無地のワンピースを着ている。わざとらしくツカサへ開口部を向けている。
彼女が落ち着いている理由はこれが訓練であったからだ。キャピーの内側に投影されている外の景色は、無数の小惑星が後ろに過ぎ去っていく。
「トレースリーダーより各機へ。状況報告」
右側に開いている通信画面を見る。
単純に飛んでいるだけとはいえ、小惑星を回避するため機体は上下左右に動いている。ただし今はオートパイロット。
「トレース2、コンディション、オールグリーンですわ」
シュル・ビットゥことシューは落ち着いている。
「トレース3。んも、問題ない、です」
ツィワン・ボースことツィーは緊張しているようだった。
「ツィー、緊張することないのですよ。だって、これはただの訓練ですし」
「だ、だって初めてだし……」
「ツィーは初めてなのか?」
ツカサが横から尋ねた。
「え、いや、シミュレーターも実機も経験はありますが、隊長に見てもらうのは初めてだから……」
「あっ、俺に、か。別にとって食べたりはしないさ。お前らしく飛べばいい」
「あっ、はい!」
ツィーはヘルメットの奥で頬を赤くして敬礼した。
「管制室よりトレースリーダーへ。訓練を開始してください」
僚機2人の通信画面を押しのけるようにして、ルカが映った画面が現れた。
「了解した。各機へ、オートパイロット解除。ポイントαツーの小惑星内部の洞窟へ侵入する。なお、俺より遅かったら失格だ。いいな」
「了解ですわ」
「りょ、リョウカイ」
モニターの右上に出ていた“オートパイロット”の赤い表示が消えた。右手の操縦桿に重みが加わる。
「行くぞ!」
左下でゆったりと浮かんでいる大きな小惑星に機首を向ける。
そしてスロットルを一気に押し上げる。
小惑星の洞窟の入り口は円形だった。飛び込む瞬間、キャノピーに投影された映像が赤外線映像に変わる。
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