第3章 回顧:邪マナ気配

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「じゃあ、もう一回確認するね」 「ああ」 妙に元気なリリーに溜息混じりで返事する。 さっきフォールドを終えて窮屈なコックピットに身を収めている。機体は攻撃型ステルス空母ストラディバリウスの上層デッキで固定されている。眼前には目的地の第4惑星クアトルが見える。 湖沼や大河が見えるが、大半は白い雲と緑の大地に覆われている。他には艦に興味本位で近づいてくるバジュラだけ。 ヨットに近づくイルカであればムードたっぷりだが、双方がバカでかい武器を背負っているだけあって笑える状況ではない。 「ランカ・リー搭乗のアルト機を全方位警戒で護衛。大気圏降下後はツカサは地上要員と合流、遺跡へ向かう。ちなみに一番機は私が操縦ね。私たち3機は空中待機で同時に物資の搬送。その後はキャンプの設営」 「単純な任務だ。すぐに終わるな」 「んっ? この後に何かやりたいこととかあるの?」 一瞬、長い時間を過ごせなかった家族達の姿が浮かんだ。 「いや、特にというわけじゃないが……ところで、この艦のことだが」 すると、モニターに10ケタの暗証番号の入力画面が現れた。 「その情報を知るにはクラスA以上のIDとパスワードが必要よ」 「昔は平気でハッキングしていたくせに、ずいぶん律儀になったな」 「ハッキング性能に関してはアップグレードされてないから、ファイアウォールの突破は無理だよ。昔は最新鋭でも50年経ったら、すっかり時代遅れなの」 「はいはい、そうですか。別に詳しいスペックが知りたいわけじゃない。ただ、この艦の仕様で最新鋭といわれていて違和感を覚えただけだ」 外観は、艦上部のアングルドデッキ、中段に機体整備兼射出階層の2層を備えた多段式空母だが、これ自体は他の艦にもある。 戦艦並のエネルギー兵器が最下層にズラリと並んでいるが、それら意外に目新しい装備は見えない。 「いつか分かるって」 そういいながらリリーは笑っていた。 「……知っているな?」 「さあ」 だが彼女の含み笑いは収まらない。隠し事という芸当をいつ覚えたのか。
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