刑事の章2

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週末になると多くの買い物客で賑わうショッピングセンター内は、平日の昼間でもそれなりに人の姿があった。 その多くはやはり女性――とりわけ主婦が多い。 彼女たちから見て自分と中里の組み合わせはどんなふうに映っているのだろうかと、一之助はふとそんなことが気になった。 「ずいぶんと広いんだなァ」 店内をきょろきょろと見回しながら漏らす中里。 「もしかして来るの初めてですか?」 「誰が好き好んで人混みに来たがるかよ。かみさんと娘はしょっちゅう来てるみたいだけどな」 先輩刑事の落ち着きない理由がわかって、一之助は思わず笑みを零した。 それに気づいた中里が肘で脇腹を小突いてくる。 「面白ェか?俺がおのぼりさんしてる姿がそんなに面白ェか?」 「ちょっ…チュンさんやめてくださいよ!人が見てるじゃないですか」 そんなやりとりをしながらエスカレーターを昇り、一之助たちはやがて目的地へと辿り着いた。 《kurari》――事件の被害者である村中範夫が経営していたマッサージ店である。
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