刑事の章2

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「どうやら営業してるみたいですね」 「だな」 入口に置かれた小さなカウンターの奥には、従業員と思しき若い女性の姿があった。 歳は20代後半――一之助とさほど変わらないように見える。 栗色のロングヘアーを後ろで1つに束ねた彼女は、特に何をしているわけでもなく、ただぼんやりとその場に立ち尽くしていた。 「あの、すみません」 かなりの距離まで近づいたが気づいてもらえず、一之助は静かに声をかけた。 はっとして顔を上げた彼女は、すぐに笑顔を作る。 「はい、いらっしゃいませ」 その胸もとには『よこや』と書かれた名札。 横谷紗英――彼女は事件現場に居合わせた5人のうちの1人だ。 「コースはお決まりですか?」 と、横谷がマッサージのメニューが書かれたプレートを差し出してくる。 昨夜彼女に事情聴取を行なったのが別の刑事であるためか、一之助と中里をお客と勘違いしているらしい。
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