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ちらり、一之助は店内を窺った。
お世辞にも広いとは言い難いそこには、3本のベッド。
そしてそれらを区切るために置かれたパーテーションが2枚。
従業員の数は横谷の他に2名。
客の姿は今のところ見当たらない。
「いえ、我々はこういう者でして」
と、一之助と中里は懐から警察手帳を取り出す。
「最翁署の中里です」
「同じく、間宮です」
それを見た横谷の顔が途端に強張った。
「…どういった、ご用件でしょうか」
「鍋島さんはいらっしゃいますか?」
鍋島多香子――《kurari》の店長を務める女性で、横谷と同じく事件現場にいた5人のうちの1人である。
「本日鍋島はお休みをいただいておりますが…」
こちらが刑事とわかっても横谷は接客口調のままだが、そこには明らかな警戒と不安が窺えた。
「では林田さんは?」
林田真由――事件現場となった部屋の持ち主である彼女は、どうやらこの店の副店長らしい。
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