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「林田は…」と言って店の奥に顔を向ける横谷。
そこには扉が1枚あり、その上に壁時計が掛けられている。
時刻は12時40分――事件発生から約半日。
「本日13時からの出勤となりますので間もなく来ると思います」
「では待たせてもらおうかな」
と、中里は入口の横に設けられた待ち合い用のベンチに腰を下ろす。
一之助もそれに並んだ。
横谷はしばし何かを考え込んだあと、一礼して店の奥にある扉へと入っていった。
「ありゃ連絡に行ったな」
中里がぼそりと呟く。
「鍋島か林田にですか?」
「或いはその両方にだ」
鑑識からの報告によると、被害者の食べたケーキとフォークからはシアン化カリウムが検出されている。
検出反応が特に強かったのはケーキの表面だそうだ。
この事件が殺人であることはまず間違いない。
そして犯人は現場にいた5人の中にいる。
或いは、5人全員が共犯の可能性だってあるかもしれない。
「連中もこの事件が殺人で、自分たちが被疑者であることをわかっている――つまりは警戒してるってことだ。心して掛かれよ?」
先輩刑事からのアドバイスに一之助は力強く頷いた。
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