刑事の章2

6/17
前へ
/269ページ
次へ
「林田は…」と言って店の奥に顔を向ける横谷。 そこには扉が1枚あり、その上に壁時計が掛けられている。 時刻は12時40分――事件発生から約半日。 「本日13時からの出勤となりますので間もなく来ると思います」 「では待たせてもらおうかな」 と、中里は入口の横に設けられた待ち合い用のベンチに腰を下ろす。 一之助もそれに並んだ。 横谷はしばし何かを考え込んだあと、一礼して店の奥にある扉へと入っていった。 「ありゃ連絡に行ったな」 中里がぼそりと呟く。 「鍋島か林田にですか?」 「或いはその両方にだ」 鑑識からの報告によると、被害者の食べたケーキとフォークからはシアン化カリウムが検出されている。 検出反応が特に強かったのはケーキの表面だそうだ。 この事件が殺人であることはまず間違いない。 そして犯人は現場にいた5人の中にいる。 或いは、5人全員が共犯の可能性だってあるかもしれない。 「連中もこの事件が殺人で、自分たちが被疑者であることをわかっている――つまりは警戒してるってことだ。心して掛かれよ?」 先輩刑事からのアドバイスに一之助は力強く頷いた。
/269ページ

最初のコメントを投稿しよう!

121人が本棚に入れています
本棚に追加