刑事の章2

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程なくして横谷が扉の奥から戻ってくる。 それと同時に―― 「お待たせしました」 店内とは別の方向から1人の女性が姿を見せた。 歳は30前半くらい、茶色いショートカットの髪。 胸もとの名札には『はやしだ』と書かれている。 「横谷から連絡を受けました。警察の方だそうで」 一之助と中里はベンチから立ち上がると、再び警察手帳を取り出した。 「最翁署の中里です」 「同じく、間宮です」 「《kurari》の副店長を務めさせていただいております林田です。本日はどのようなご用件でしょうか?」 落ち着いた口調で笑顔を向けてくる林田。 しかしその目もとが腫れぼったいように見えるのは、事情聴取が遅い時間まで続いたからという理由だけではないだろう。 事情聴取を行なった三橋によると、村中の死を目の当たりにした5人は当初かなり取り乱していたそうだ。 「昨日の今日で申し訳ないんですが、皆さんにもう一度お話を窺いたいと思いましてねェ」 中里がそう答えると、林田は笑顔のまま頷いた。 「店長の鍋島から警察の捜査には協力するよう仰せつかっております。お店のほうもありますので全員まとめてというのは流石に無理ですが」 「お1人ずつで構いませんよ。ご協力感謝します」
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