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「ここでは人目もありますから。どうぞこちらへ」
店の入口にスリッパを用意され、一之助と中里は靴を脱いでそれに履き替えた。
店員たちの会釈に迎えられ、先ほど横谷が入っていった扉の奥へと通される。
「従業員用のスペースですので少し狭いですが。どうぞお掛けください」
店内の3分の1も満たないその場所には、中央に長テーブルが1つとイスが4つ。
他に小型の冷蔵庫やポットなどがところ狭しと置かれていた。
「お茶でよろしいですか?」
林田の問いに一之助は「いえ、お構いなく」と社交辞令を返したが――
「コーヒーはありますか?」
堂々とした口調で中里が言う。
「ちょっ…チュンさん!」
「いいじゃねえか、せっかく用意してくれるってんだからよ」
「マナーってものがあるでしょ!」
そんな2人のやりとりを見てくすりと笑みを漏らす林田。
「インスタントでよろしければありますよ」
「全然構いません。高級品は肌に合いませんから」
「失礼を申し上げてすみません」
中里の代わりに一之助は頭を下げる。
当の先輩刑事は「ミルクはいりませんが砂糖は2杯で」などと更に注文をつけていた。
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