刑事の章2

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「ここでは人目もありますから。どうぞこちらへ」 店の入口にスリッパを用意され、一之助と中里は靴を脱いでそれに履き替えた。 店員たちの会釈に迎えられ、先ほど横谷が入っていった扉の奥へと通される。 「従業員用のスペースですので少し狭いですが。どうぞお掛けください」 店内の3分の1も満たないその場所には、中央に長テーブルが1つとイスが4つ。 他に小型の冷蔵庫やポットなどがところ狭しと置かれていた。 「お茶でよろしいですか?」 林田の問いに一之助は「いえ、お構いなく」と社交辞令を返したが―― 「コーヒーはありますか?」 堂々とした口調で中里が言う。 「ちょっ…チュンさん!」 「いいじゃねえか、せっかく用意してくれるってんだからよ」 「マナーってものがあるでしょ!」 そんな2人のやりとりを見てくすりと笑みを漏らす林田。 「インスタントでよろしければありますよ」 「全然構いません。高級品は肌に合いませんから」 「失礼を申し上げてすみません」 中里の代わりに一之助は頭を下げる。 当の先輩刑事は「ミルクはいりませんが砂糖は2杯で」などと更に注文をつけていた。
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