刑事の章3

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「…横谷です」 事情聴取2人目として向かいのイスに座った彼女は、こちらに対して先程以上に警戒心を抱いているようだった。 「お忙しいところすみません」と軽く頭を下げる一之助。 しかし―― 「協力をするよう副店長に言われましたから」 返される口調はどこか刺々しい。 「ご協力感謝しますよ、横谷紗英さん」 中里もまた、威圧を含んだ口調でそう返した。 相手によって態度を使い分けるのが、このベテラン刑事のやり方である。 「…それで、なにをお答えすれば良いんですか?」 「あなたの昨日1日の行動をもう一度確認させてもらおうと思いましてね」 「お話できることは全てしたはずですが」 「ええ。ですから“もう一度”」 「…私が、疑われてるんですか?」 「いいえ」と中里はかぶりを振って―― 「我々はあなた方全員を疑っています」 きっぱりと言い放つ。 「自分で言うのもなんですが、刑事ってのは嫌な商売でしてねェ。目に映るもの全てを疑わないと真実に辿り着けんのですよ」 「私はオーナーを殺していません、殺すはずがない」 「そう言い切れる根拠は?」 「私はオーナーを心から尊敬しています」 答えになっていない答えを返されて、中里は半ば呆れたように「…そうですか」とだけ頷いた。
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