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眠い目をこすって辿り着いた現場には、深夜にも拘わらずそれなりの人だかりができていた。
車から降りた一之助はその間を割って進むと、黄色いテープの外側で野次馬たちを牽制している警官に警察手帳を見せる。
「お疲れ様です!」
敬礼をする彼に「お疲れ」と応えてテープの中へ。
閑静な住宅街の中に佇むアパートの一室。
開け放たれた玄関から中を覗けば、奥に見慣れた老刑事の姿があった。
「チュンさん、お疲れです」
「お早い到着だな」
と、老刑事――中里がいつもの仏頂面を向けてくる。
「これでも急いで来たんですよ」
苦笑を浮かべながら室内に足を踏み入れる一之助。
「まだ帰ってなかったのか?」
「色々と片付けてたら遅くなっちゃって。チュンさんは?」
「三橋に付き合わされて別件の聞き込みをな。たまたま近くにいたんだ」
「そいつはご愁傷様でした」
そんなやりとりを交わしながら、室内をぐるりと見回す。
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