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『雨』
ぽっ
額に水の雫があたった
どうやら、雨が降ってきたようだった
雨は次第に強くなっていき、わたしを濡らしていく
しばらくすると、雨は数メートル先も見えないほど激しく降ってきた
地を叩く音も激しくなっていき、周囲の音が聞き取りにくくなってきた
もちろん、そんななか傘もささずに外に立つ私はずぶ濡れだ
それでも
私は、雨が好きだ
嫌いなマラソンだって中止にしてくれる
雨は私にとってヒーローと言ってもいいかもしれない
今回だって、雨は味方だ
雨が視界も音も奪ってくれるから、私は誰にも気付かれずに死ぬことができる
少女は、鉛色した頭上を見上げる
「最期まで私の味方でいてくれてアリガトウ」
少女は笑み
そして、刃を自らに突き立てた
後に見えたのは雨のつくる白いカーテンだけ…
後に響くのは雨粒が地を叩く音だけ…
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