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男は、幹の影に見を潜める。拳銃が吐き出す弾だけは、避けるのが苦手だった。その幹より先には進めない。男は、前進する方法をと模索した。
「神が付いている。怯むな行け!」
全体から聞こえて来るのはそんな掛け声だ。神とは男のことだ。男の黄髪と黄眼は、世界にひとつしかない神様の色だった。それが、男を神と呼ぶ理由であった。
「俺が居ても、全体のステータスは上がらないよ」
男は、掛け声に皮肉に答えて、走って来る兵士に紛れ込んだ。そのまま、相手が作った種術の防壁に、刀を突き立てる。
刀突き刺された箇所には皹が入り、防壁は壊れた。防壁の向こう側からは、拳銃が発砲される。男は、地べたに身を伏せる。危うく、蜂の巣になりかけて男は、鼓動が高鳴るのを感じた。
久しぶりに興奮していた。
「神を捕らえろ!」
神官が叫んだ。
「神を守れ!」
政府が、雄叫びを上げる。
男は、双方の戦いに呆れながらも、神官陣地に走り込むことを優先させた。
男の目的は、軍師だけであった。ともかく、軍師を黙らせて、政府と共に戦うことを強要するつもりだ。
火薬の売買を仕切っていた商人を黙らせてから、政府側には満足に火薬も手に入らない状態だ。共に戦うのが無理ならば、せめて、火薬を奪おうという考えもある。
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