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「捕らえろ! 神の首を今度こそ犠牲に!」
式紙師が、叫んだ。
男の神経に痺れが走っていた。撃たれた痛みもあるが、落ちた時に、毒針を刺されたらしい。手足と背中に違和感があり、視界が霞んでいた。
どうやら、少し踏み込みすぎたらしい。男は、群がる神官を薙ぎ倒して、火薬倉庫を探した。男の頭には、ひとつの提案があったのだ。
見えてきたあばら屋の扉を蹴り付ける。まだ、動けることを良いことに、中へと乗り込んだ。だが、そこに在ったのは死にかけた種師による人柱であった。
「結界に喰われたのか?」
男は、聞いたが、種師は呻くだけだ。結界を維持する為に描いた種陣が、種師を飲み込んでいた。種陣の中央に、仰向けで浮かぶ種師の髪は乱れていたが、女であることは分かった。
「――まあ、良くあることらしいから気にするな。悪いけど、助けられない」
男は、側にあった槍で、種師の腹を切っ先で突いた。種師は、悲鳴も上げずに息絶えて、種陣の上に転がった。流れた血潮が、種陣を消す。それと同時に、神官が張り巡らせていた結界が崩壊する。外では、神官があわやの惨事にあわてふためいた。
「神は、政府の味方か!」
式紙師の女が走り込んで来る。ソラは、槍を投げ捨てて振り返った。
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