Stage1

8/9
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/282ページ
 男は、参謀に言った。 「移動種陣で、麓の村に飛ぶか、式紙で空に飛ぼう」 「神よ。急にそのような事を言われても困ります」  参謀が、馬から飛び降りて、詰め寄ってきた。だが、男は引かない。 「どうする。神官なんか、構ってられないだろ?」  男の耳には、雪崩の音が聴こえていた。神官が張っていた結界も解かれて、大自然が政府軍を取り巻いている。神官は、いち早く逃げ出した。そちらは、黙って見送ることにする。決戦は、東にあるニルだ。そこ以外で激突する理由など、男には無かった。 「総隊長、兵を西に飛ばします! 式紙師は空に! 自力で飛べるものは、山の西にあるフラグ村へ!」  参謀に変わり、雪崩に気付いた軍師が叫ぶ。男は、軍師を一瞥する。行動の早さは、軍師の方が早い。そうやって、男は、隊全体の人間を分析する。 「……神は、掴まってください。村へ飛びます」  参謀が舌を打ち、ソラの傍らに立つ。 「いや。俺は、後から合流する。兵士を頼む」  男は、倒れた兵士を示した。 「また、勝手なことをいう。今度はなにがしたいのですか?」  参謀は、男に口煩い。 「今度は、雪崩が見てみたいんだ」
/282ページ

最初のコメントを投稿しよう!