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神官と政府の最終決戦が始まるとされた春。
監獄島にあるユーリ邸に匿われていたアリトが、懐妊した。
ユーリ邸に住む誰もが、その現実に開いた口が塞がらなかったのは言うまでもない。なにせ、なんの兆候もなかったのだから。
「闇医者と会っていたということです?」
ルティアナの発言にサシャとカリンは、アリトが引きこもってしまった部屋に視線を移す。
「アリトさんが外に出たこと、ネリーも気がつかなかったって」
サシャは、扉を叩く。アリトからの返事はない。この状態が、二日も続いている。
「ネリーだって毎日見張りしていたわけではありませんわ」
カリンが、首を振った。
「良いじゃない。会いたかっただけだよ。きっと」
傍らで聞いていたサシャは、大袈裟にアリトと闇医者を庇った。
「とにかく、扉をこじ開けないことには、意味がありません。お二人とも少し離れてください」
ルティアナが、ビスケットとミルクが載ったトレイを片手に身構えた。
懐妊騒動から二日。アリトは、水を飲んだくらいて、なにも口にしていない。
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