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世間に神と呼ばれる男は、西にあるコスイ山脈で、戦争に参加していた。
コスイ山脈の木々の下には、根雪が残る。獣道は、雪解けの水でぬかるみ、足場が悪い。標高三千メートルはある山脈の中間地点で、神官と政府は、陣地争いをしているのだ。
男の居る政府軍は、この山脈を超えて、東のニルに向かう途中だ。この時期、雪崩の心配も予測されたが、街道を練り歩くよりは戦の率も低いだろうと云う、軍師の指示に従ったのがそもそもの誤算だった。
神官もそれを見越して陣を構え、狙って突撃して来たのだ。
攻撃は、一発の種術が、先頭を歩いていた兵士を焼いたことから始まった。神官の兵数も侵略方法も分析する余裕も無いままに、政府軍十五万人は、神官の奇襲を受けてたつことにしたのだ。
それから、かれこれ半日になる。日は陰り、夜が静かに近寄っていた。
男は、神官側の指揮官を探して、入り乱れる人々を殴り飛ばす。ただ、そんな男を誤算が出迎えた。
男の足を止めたのは、拳銃の発砲音だ。
なだれ込む神官兵士のその後方から、弓矢隊ではなく狙撃隊が攻撃を仕掛けて来る。男の周囲で兵士が悲鳴を上げた。地面には、敵味方関係なく人が倒れる。
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