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「つまり、私が私で在る故に私であってそれが指すところの私が、客観性を持った私である事こそ私を私として認識する私の私だと思う」
…こうしてまた訳のわからない事を言う。
残念なことに、
やはり、かなた(彼女)だ。
時刻は昼過ぎだろうか、今日はかなたの部屋にいる。
それは新聞を取りに部屋を出た俺の横に、その瞬間まさにスティンガーミサイル(恐らく模型)を持って部屋を出ようとする彼女を見つけてしまったからだ。
慌てて部屋に押し戻したところ、所謂軟禁状態にされ今に至る。
「で、俺はいつ部屋に戻れるんだ?」
「だから私が把握する私とは潜在的な私の私が私と思うところの…」
「そうだな、わかったからもう大丈夫だ」
「あれ?今どこまで話したっけ?」
「かなたが=かなたになるところまでだ、俺は部屋に戻って朝飯を済ませたい」
「ぁあ、なら今からパンを焼いてあげるからかじってて構わないわ」
「…。」
「何か不満でも?」
「いや、いいんだ…」
「そう」
かなたが飽きるまでは解放してもらえそうにない。
なら角度を変えて考えてみよう。
俺はいま彼女(かなた)の部屋にいて軟禁状態だが、もしこうならなければ今頃俺の部屋でスティンガーミサイルを浴びて大変な事になっていたのだ。
そう思えばむしろ無事を喜ぶべきではなかろうか…
しかしここまで考えたあたりでまた少し悲しくなってきた。
「パンが焼けたわ」
「…おう」
「パンは嫌い?」
「いや、大丈夫だ」
「そう、なら適当に七味でもワサビでもつけて食べなさい」
「選択肢がないんだが…」
「冗談よ、チョコレートかハチミツか、ガムシロップか、ホイップクリームか…」
「待て待て!えらく甘いものばかりだな」
「私は甘いパンしか食べないの」
「俺は甘党じゃないぞ?」
「…。」
「……。」
「じゃぁハバネロね」
「こら待て」
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