第一章―呪いの始まり―

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一年中、花咲き乱れる美しき国。 まるで花柱の様に、世界の中心に鎮座するその国の名は、花幸祈【カコウキ】といった。 その国で生きる民達は、その名をなぞる様にただ花を育てそれを国益としている闘いとは無縁な生き物で、他国からは『世界の平和の象徴』と羨まれたり『暢気を絵に描いた様だ』と笑われたりしていた。 「世界平和の象徴…か」 その呼び方を嫌う様に、彼女は空を仰いだ。 本当に平和な空間など、何処にも存在しはしない。 平和そうに見える、この国にだって。 問題はある。 「戦慣れしたお前に、平和は物足りないか?壱美」 彼女を悩ませる『彼』の問題。 『彼』の問題は彼女にとって、その本人よりもまして問題である。 何故なら彼女は、彼に全てを捧げて仕える者であるからだ。 彼女は、ふっと笑って『彼』に首を振った。 それに対して返ってくる『彼』の物憂げな微笑。 彼女の心に突き刺さる、その微笑。 それを掻き消すように、目の前を花弁が舞っていく。 ――もうすぐ。 もうすぐ、その問題を消し去る事が叶う。 それは『彼』だけがまだ知らない、大いなる秘密。  
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