第一章―呪いの始まり―

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――遡る事、十五年前。 花幸祈国王、扇華宝【センカホウ】と王妃、美零崇【ミレイス】の間に待望の第一子が誕生した、まさにその時。 「見事、男子に御座います」 取り上げた医師の言葉に二人は喜び互いを見つめ合い、微笑む。 「こっ……これは!!」 和やかな雰囲気は医師の悲鳴により打ち消された。 「何事だ。騒々しい」 慌てて家臣が医師に近付き、取り上げたばかりの子を見ると右手親指の根元、右首筋、右の頬、左目の下、左胸、腹、左の太股に小さいながらも奇妙な痣があった。 そして、何より皆を驚かせたものがある。 「男子じゃなかったのか!?」 今の今まで有ったはずの男性器が有るべき場所から消えていたのだ。 医師は青ざめながら呟く。 「月下美人の呪い……」 その場にいた王妃以外の全ての人間が反応した。 王家に関わる人間で知らない者はいない。 王家に伝わる呪い『月下美人』。   「国王様、月下美人とは何です!?我が子はどうなるのですか!」 王妃は、国王から何も知らされていなかった。 それは数百年という長い間、月下美人の呪いを持ち生まれた子がいなかった為に家臣達は勿論、国王すらも大昔のくだらない作り話かと思っていたからである。 「……王家には、稀に月下美人の呪いを受けながら生まれてくる子がいるそうだ」 国王は怯え、声を震わせながら話す。 「月下美人の呪いを受けて生まれた子はその証を身体中に持っている。この子の……その痣だ」 身体中に散らばる無数の痣。 呪いの証。  
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