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今まで生きてきた中で、我が子が呪われなければならない程の酷い行いなど、した事がなかった。
それどころか誰よりこの国の平和を考え、昼も夜もなく国民を想い、幸せに暮らせる様にしてきたというのに。
国王は、この世の終わりが訪れたかの様な暗い表情で、非情な神へ『何故?』と心の中で繰り返し問い掛けている。
「国王様……」
暗く落ち込む国王とは反対に、王妃は絶対に大丈夫だと言いたそうな強い瞳をしていた。
そんな王妃と、その手に抱かれ泣きもせず大人しく眠る我が子を、国王は同時に抱き締める。
――生け贄……?
いや、そんな必要なんてないはずだ。
国も妻も我が子も……何があっても必ず私が守ってみせる。
国王は、そう心に決めた。
「美零崇……。お前に呪いについての全てを話そう。そしてこの子の今後はお前に任せようと思う。私は反論する者達を何とか説得する。それが私達にとって一番の方法じゃないか」
王妃は深く頷き、赤ん坊を見つめた。
「ねぇ、この子の名前……。何にしましょうか」
――二人が考えたその名には。
呪いに決して負ける事のない強い精神を持つ様に。
次期国王として強く気高く美しく育ってくれる様にと、願いが込められた。
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