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「で、どうした?」
タバコの火を消すと行儀悪いが机に腰をかける。
彼は切羽詰まった物言いで、
「B.D.が…………」
「酷いな」
立ち込める異臭に思わず鼻を摘まむ。
石畳には乾ききって黒ずんだ血。
そう、昨夜この場所で市民宝石が狩られたのだ。
「見つかった遺体には原動力が既に抜き取られてた。灰化しなかったのは僅かに残った欠片のお陰だ。ま、こっちとしちゃあありがてえ話だが…」
バルドは首を横に振り、次に出てくるであっただろう言葉を否定した。
「……………」
アレクは黙った。
やり口を知っているから。彼がやったのだと告げている。
やり場の無い感情を押さえ込む代わりにぎり、と奥歯を噛み締めた。
「しゃーねー、一旦学園に戻って」
グシオンがそう言いかけた刹那、向かい側から突如として濁流が押し寄せてくる。
「あれは魔道!?」
咄嗟に叫び避難しようも、早さが尋常ではない。
あっという間に三人は飲み込まれ、壁に叩きつけられる。
ぐ、とくぐもった悲鳴をあげた。
辛うじて助かったアレクは頭を振るう。
瞬間、突風が貫く。
鎌鼬のごとく。
頬を切られるも、怯みはしなかった。
知っていたから。
だがあり得ない。
だって彼はもういないのだから。
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