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病み上がりの小学生がトボトボと歩いていると。
「ちょっと!! そこのあんた!!」
後ろから美少女に声をかけられた。
年の頃は現在の光太郎と同じ、つまり小学生だ。
オレンジ色の腰まである長髪だが両耳の辺りの髪だけは赤いゴムを使い、小さく束ねていた。
ちょっとしたツインテール気分だ。
目は赤く、スラッとしていて出ている所は出ている。バランスの取れた体型だ。羨ましがる同性が何人いるか分からない。
大人でも彼女を羨ましがる人はいるんじゃないかと思えた。
胸は小学生だから成長途中だ。
―――綺麗な子だな。
素直に抱いた感想だった。
『この世界』にも主要キャラクターみたく可愛い子が居るとは。
―――ってか、何の接点もない“俺に声を掛けてきたのか。”
アニメの世界とは言え、生を授かっているのだから不思議はない。
生きてるのだから普通の会話だってする。
近所の人と良く話すし、脇役にもなれないクラスメイトともコミュニケーションは取っている。
何も不思議な事はない。
普通の事だ。
「何か用か?」
「あんた、アタイにこの街を案内なさい!!」
偉そうに少女は言う。
光太郎の回答は決まっていた。
「嫌だよ。めんどくさい」
一蹴したのだった。
「何でよ!!」
「俺はこの後に弁護士を呼んで、裁判に勝たなくてはいけないんだ。
厳しい世の中とは言え、小学生を放り出す病院を許せるもんか!!」
光太郎はそう言うと、その場を去ろうとした。
本気で勝つ気があるなら、まずは光太郎の証言を認めさせる必要がある。
「ああ、それならアタイの仕業だわ」
ピタリと、足を止めた。
決して逃せぬ、衝撃的な一言が耳に届いたからだ。
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