物語は始まる

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あれから買い物に2時間近くを費やした。 「お前らなぁ~」 光太郎もいい加減キレ気味だった。 何の恨みがあったのか、アリア以外にも光太郎は服をせがまれた。 せがんだのは沙姫、静香、ミュウと説明をするのも億劫なまでにいつもの面子だ。 季節はこれから夏で暑くなるというのに、光太郎の財布には極上のブリザードが吹雪いた。 光太郎の前行く女子達は笑い合いながら歩道を歩く。 自分は新たに追加された紙袋を持って後ろから付いていく。 「ったく、どうしたって……」 正直、小学生の身体には過ぎた荷物の量だ。 疲れたので抗議の弁を告げようとしたが――止めた。 彼女達の笑い合う姿を見たら言いづらい。 楽しくやっているなら光太郎が口出す理由はなし。 「はあ……めんどくさいな」 それは誰かに向けて言ったつもりはない。 ひょっとしたら自分の性格にだろうか? それでも言える事はあった。 本人には自覚はないだろうが、その時の彼の表情はとても良い顔であった。
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