誰かの為に生きる世界

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先に動いたのは沙姫だった。 公園を駆けて光太郎に接近しようとする。 「はあっ!!」 走り様、ピンク色の球体を即座に作ってそれを飛ばす。 「っ!?」 光太郎は〝原罪〟を発動させて、黒い光を放つ。 ピンクの球体もろとも吹き飛ばし、沙姫めがけて〝原罪〟は駆ける。 「くっ」 苦悶の顔を作りながら〝原罪〟をかわした。 仇である存在を沙姫は睨み付ける。 「なん……で」 目を細め、憤怒の情を表に出す。 だが、そこには迷いが見え隠れした。 戦う事から一歩退いてしまう理由があった。 殺すと誓ったところで目の前に居るのは今まで自分を助けてくれた少年だ。 本当は心苦しい。 けれど、父親を傷付けたのが彼ならば沙姫は決して許す気はない。 「何でよ?」 違うと答えて欲しい。 そう願って叫ぶ。 「何で、何であんな事をしたのよ!!」 沙姫の怒声は鎮まるはずはない。 それでも違うと言ってくれたなら今まで無視をした事を謝りたい。 だから叫ぶ。 同時に彼女の胸に鈍痛が起こる。 もし違えばーー誰ヲうラメば良イの? 不吉な考えを押し殺し、勢いで彼女は言う。 「答えなさいよ!! 光太郎!!」 答えはない。 七支刀を肩の高さまで上げると、沙姫めがけて一気に振り下ろされた。 いつぞやに光太郎が見た夢を再現するかのように。
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