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「悪いな、沙姫」
光太郎は沙姫の眼前に立ち塞がる。
右手には七支刀。
それを高々と振り上げ……
「止めて!!」
下ろされる事はなかった。
理由は第三者による介入が原因だ。
光太郎は上げていた七支刀を下ろして声のした背後へ視線を向けた。
そこにはアリアと円香の2人が立っているではないか。
「お前ら……」
いつの間に居たのかーー問うのは止めた。
光太郎は考える間もなく言葉を紡いでいた。
「何か用か?」
「何か用か?やあらへん。なんで沙姫ちゃんと戦っとるんや?」
端から見れば光太郎が一方的に戦いを仕掛けたと勘違いしてもおかしくはない。
ここで否定するのは簡単だ……が、そんな事をしても何の意味もない。
沙姫の立場を危うくするだけだ。
「さて、な?」
マンガで見た悪役の含み笑いを精一杯に思い出して真似る。
存外に通じるものであったらしい。
光太郎の含み笑みは確かに2人の気を阻害したらしい。
これ以上、神経を逆撫でしてはボロが出る可能性がある。
「俺には行くところがないからな。しばらくは沙姫の家で厄介になる。文句があるなら……いつでも受けて立ってやるよ」
そのセリフを言い残して光太郎はこの場を後にした。
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